「何かお探しですか?」レベッカは眼鏡をかけて尋ねた。真夏の空のように青い目がこちらを見つめている。藤の花が咲き乱れる店先。かわいらしい植木鉢や芳しいハーブ。エキゾチックなラベルが貼られた量り売りのびんでいっぱいの健康食品の店に突然入ってきた男は、サイモンと名乗り、裏のコテージをしばらく貸してほしいと切り出した。着いたばかりで、途方に暮れているというアメリカ人が、通りがかりでは気づくはずのない古びたコテージをなぜわざわざ借りようとするのかしら。それに、一緒に暮らす祖母はアメリカ人を毛嫌いしている。「申し訳ないけど…」と言いかけたレベッカに、サイモンは少年のような笑みを浮かべた。そのとき、レベッカはとてもかなわない気がした。
#並下程度/表紙に読み折れ・傷あり。小口ヤケあり。ページヤケあり。
#140g