マギーがロイスと別居をはじめたのは、9カ月前の、今日のように霧の深い日のことだった。5年間いっしょに暮らした日々を思うと胸が痛み、いまだに離婚に踏み切れない。別居後はじめたコーヒーハウスでマギーが開店準備をしていると、ふいにロイスが現れた。しばらくぶりに見る姿にマギーは動揺したが、顔を合わせたとたん、ついそっけない態度をとってしまった。彼は言葉少なに一通の手紙を渡して帰っていった。それは以前、養子を申し込んだことのある協会からの返事だった。だけど別居中の夫婦に養子縁組みが認められるはずがないわ。手紙は開封しないでおこう…。そのまま仕事に忙しく過ごして家に帰ると電話が鳴っていた。「女の赤ちゃんです。明後日そちらに連れてまいります」そう告げられて、夢ではないかと思った。あんなに欲しくてたまらなかった赤ちゃん。
#並程度/表紙に少し傷あり。少し小口ヤケあり。
#150g