結婚式以来、八年ぶりに見た夫はみだらな女性を膝の上に座らせた、まさに堕落した公爵と呼ばれる姿そのものだった。だが、そんな夫を見てもジュリアに嫉妬の気持ちはない。怒りを感じるだけだ。なにしろ夫が結婚生活を放棄して国を出ているため、彼のいとこに手当てを削られたジュリアの生活は困窮する一方なのだから。このままでは、近いうちに路頭に迷ってしまう。公爵家の正式な跡継ぎを産まないかぎり、夫のいとこに公爵位も奪われるだろう。困り果てたジュリアが考えたのは、高級娼婦の振りをして夫を誘惑し、妊娠しようというもので──。
#並~並下程度/表紙カバーに少し傷あり。
#200g